ぬるくて美味しい大きなビール
は、Pub&Hostel。Pubといえば、イギリス。少なくとも僕にとってはそう。
2003年、平成15年の夏は3週間イギリスにいた。初めての、今のところ最後の、長期の海外滞在。
滞在していた理由はここでは詳しくは書かないけど、当時演劇を学んでいた僕にとってエキサイティングな機会に、縁あって誘われたのだった。
夜は危険だからか、昼に街をよく歩いた。見るものすべてが光り輝いて、聞く音すべてが生まれたてのようで、古めかしく美しい街。雑踏。その角に、道のあちこちに、Pubはあった。
飲んだことのない、茶色がかったビール。大きな魚と山盛りポテトのフィッシュ&チップス。ポテトチップスは日本語で、ここでの名前はクリスプス。スッパムーチョの20倍は格好いいパッケージのビネガー味のクリスプスを、ぬるいブラウンエールで流し込む僕は、ここがどこだかわかっていない。いつも、Pubには連れられるままに入った。
大きな大きなビールだった。ジョッキのビールしか知らないから、UFOを縦に伸ばしたようなパイントグラスがどのくらいの容量かわからないまま飲んだ。夏の水道水よりぬるい。真昼間だが、エアコンの風はない。開けっ放しのドアから、熱い空気が流れ込んでくる。この年の夏、ヨーロッパ全体が異常な猛暑に見舞われていた。40℃近いロンドンに、エアコンがある店が全然なかった。そんなことは当たり前だというふうにイギリス人たちは、昼間から大きなぬるいビールをがぶがぶ飲んでいた。こんなことは滅多にないということがよくわかった。
あれから15年経った。あれから何杯ビールを飲んだだろう。ビールの美味しい店で働いたり、今もビール党の僕にとって、いちばん美味しいビールの味は、いまだに平成15年のイギリスの、ぬるくて大きなPubのビールなのだった。
猛暑の中、今年はあの旅を何度か思い出していた。あの光景を、いつか鳥取の街角のPubでも見てみたい。何より自分が味わいたい。楽しみに思いながら、夏の終わりのY Pubで、新しいおつまみメニューをいくつもいくつも考えている。
しぶや
Social media
Facebook
facebook.com/Y.Pub.Hostel
Instagram
instagram.com/y_tottori